アヴィリオン王国設定集

 

・地理

 アヴィリオン王国はデメテール大陸の南東部に位置する島国である。国土は首都ティンタジェルを擁するアヴィリオン本島と本島南西に位置するヒベルニア島からなる。緯度は高いが、北方から流れ込む海流により気候は温暖である。

 

・宗教、文化

 大陸東部の諸国家と同じく、光神教を信仰するレギウム文化圏(注)に内包される。

 

・民族構成

 大陸南部に居住するオステン人や海を隔てて隣接するゴール王国により、数次に渡る侵略を受けてきた歴史があり、現在のアヴィリオン人は原住民族の古アヴィリオン人とそれら大陸系の民族との混血である。公用語はアヴィリオン語であるが、上記の理由から地域によって語彙や発音にかなりの差がある。

 

・王室の歴史

 中世前期までは古アヴィリオン人、オステン人による小王国が分立していたが、光神暦1066年にゴール貴族オック公ウィリアムという人物がこの地を征服・統一した(オック朝)。以後光神暦1585年の現在に至るまで、王位はこのゴール貴族の血縁者によって継承されている。ただし、父系の断絶や内乱等により、途中3度傍系に王位が移っている。

現王家(ペンドラゴン家)はもともと本島北部の小領主であったが、一族に王室の血を取り込むことで外戚として発言権を増し、1485年の内乱に勝利して王位を継承した。また、ペンドラゴン家は父系に古アヴィリオン人の英雄王の血をひくと言われ、林檎の木の紋章もその伝承にちなんだものである。ただしこれは、古の英雄と自らを同一化し、絶対主義を強化するための虚構であるとみる向きもある。

 

 

・政体

 国家中枢に権力を集中させた絶対王政をとる。

 

・軍事

 最新の火器と戦術をそなえた絶対主義的な常備軍を持つ。

 

・竜

 アヴィリオン島およびヒベルニア島の山岳部原産の大型の猛獣である。巨大なトカゲのような胴と非常に大きく開く口を持ち、その容貌は凶暴である。また手足が異常に発達しており、獲物を狩るときにはその巨体に見合わず俊敏な動きをみせる。知能が高く人によく慣れ、また体格に比して非常に小食であるため、アヴィリオンでは古くから飼いならされて戦争や狩猟に使役されてきた。

 竜には、比較的低地部に生息するサラマンダー種(注1)と、高地に生息するハンター種という品種区分が存在する。サラマンダー種は最大で体長10メートル、体重7トンに達する圧倒的な巨体を誇り、一頭で大型の野戦砲を牽引する力を持つため、主に戦竜として使役される。サラマンダー種の竜に騎乗する兵士は竜騎兵(注3)とよばれ、特に王家直属の近衛竜騎兵は「軍隊の華」としてアヴィリオン国民の憧れの的となっている。対してハンター種は、その名のとおり狩猟や羊追いに使用される比較的小型の竜で、体長は最大で6メートル、体重は3トンほどである。体格では劣るものの、サラマンダー種よりもスマートでより俊敏な動作が可能である。

 野生の竜は家畜や人を襲うため駆除が進められ、近年ではほとんど見ることは出来ない。現在アヴィリオン国内で使役される竜は、全て家畜化され計画的に生産されたたものである。

 

・時代背景

 大陸東部のレギウム文化圏は、かつての中世的封建国家の時代から絶対王政の時代へと移り変わっていた。各国は国王の強力な指導力のもと強力な常備軍をそなえ、その流れに乗り遅れた国家を貪欲に吸収していった。また、航海技術の発達により遠洋航行が可能になったことで世界は大きく開け、東方の新大陸や西方の未知の国家を植民地化する動きが急速に広まっていた。大陸東端の半島国家アラゴナ王国、ゴール王国の南西沿岸部に位置する商業国ゼーラント連邦共和国などは、この植民地経営により巨万の富を得て一躍強国にのし上がった。この植民地経営に関しては、アヴィリオン王国は現在大幅に立ち遅れている。

 

 

 

 

注1.レギウム帝国、その前身共和制レギウムは、元来大陸西方のヘレス文化圏の都市国家が建設した殖民市であった。しかし本国からの独立の後目覚しい発展をとげ、紀元前世紀ころには地中海世界のほぼ全域を支配するまでになった。紀元5世紀ころには帝国衰退が顕著になり、その領土はいくつもの国家に分裂していく。しかしレギウムのもたらした文明は、帝国が国教とした光神教とともに、後身の諸国家にも継承されていった。これが、かつての帝国の首都であり、光神教の聖地でもあるレギウム(都市名)に鎮座する法皇を頂点とする、現在のレギウム文化圏のなりたちである。

 

注2.サラマンダー種の竜は、光神教の聖典に登場する悪魔の化身と考えられ、口から火を吹き、その皮は燃え盛る炎の中に入れても燃えることは無いと長い間信じられてきた。それらが迷信であることは既に証明されているが、宗教画などの伝統的な図像においてはいまだに炎の中に横たわるサラマンダー種の竜が描かれる。そしてその「火竜」のイメージは、近衛竜騎兵隊の紋章にも使用されている。

 

注3.現在では、竜騎兵は近衛竜騎兵隊と儀仗隊にしか配置されていない。竜の飼料や騎手の育成、専用装備の更新など含めると、竜騎兵の維持費は通常の騎兵の10倍にも達するためである。それでも中世以前においては竜騎兵は強力な兵種として多数保有されていたが、近年の火器の発達により竜は必ずしも無敵の存在ではなくなり、現在ではその人気に反して過去の遺物となりつつある。